みやびです。タバコとがん細胞シリーズも今日でラストになりました。これまでの日記では、タバコの発がん性物質の話から始まり、正常な細胞とがん細胞との違いや、細胞がん化のメカニズムをご紹介してきました。最後は、細胞がん化の引き金となるDNA損傷と修復異常についてです。
▼タバコとがん細胞シリーズ完結!
昨日の解説のおさらいですが、正常な細胞は以下の項目を満たすことでがん化(無限増殖能力を獲得)することを説明しました。
そしてこれらに対して、
という疑問が生じ、その原因は「DNAに異常が生じること」にある、というところまで来ましたね。
この後の話でDNAと遺伝子をごっちゃにすると意味が分からなくなってしまうので、予備知識として解説しておきます。
それではみなさん、DNAをイメージしてみてください。おそらく2本の鎖がねじれた物質を想像したかと思います。それであってます、それがDNAです(笑)
細胞の中からDNAを取り出してまっすぐ伸ばしてみると、だいたい2メートルくらいあります。こんなに小さな細胞1つに2メートルの紐が綺麗に折りたたまれているのです。
一方で遺伝子とは、DNAの配列の中で意味を持つ部分(タンパク質の設計図)のことを指します。ヒトではおよそ2万2千個の遺伝子がDNA上にあります。
ちなみに、遺伝子の部分はDNA全体のたった1.5%ほどであり、残りの98.5%は基本的に意味を持たない(あるいは研究の余地が残されている)部分になります。
まぁ要するに、DNAという長い紐の上に、たくさんの遺伝子が乗っかっているというイメージですね。
今日は細胞がん化のきっかけであるDNA損傷と修復異常について解説していきます。
私たちの細胞は日々あらゆるダメージやストレスに晒されています。
最も身近な例でいえば、紫外線ダメージなどがそれにあたります。それから、シリーズ最初の日記で書いたタバコに含まれる発がん性物質であるベンゼンの化学変化体もそうですね。
DNA損傷とは何かというと、簡単に言えば、二重らせん構造のDNAがちぎれたり、DNAを構成するパーツ(=塩基)がはじけ飛んだりします(あくまでもイメージです笑)。
例えば紫外線は細胞膜を貫通して細胞の中まで達し、中心にいるDNAに直接作用してDNA損傷を引き起こします。
紫外線やタバコの有害物質などでDNAが損傷してしまった場合、細胞は最優先でそれを修復します。
DNAがちぎれてしまった場合は、単純にそれをつなぎ合わせます。
もし重度のダメージでDNAがはじけ飛んでバラバラになってしまった場合、もう一方の遺伝子(※)の同じ部分の配列をコピーして直します。
(※私たちの細胞のDNAは両親から譲り受けているので、性染色体以外は基本的に対になっています。)
日々体中の細胞のDNAが壊れては修復されてを繰り返していますが、細胞はDNAの修復を稀に失敗します。
さらっと書きましたが、このDNA修復の失敗は、生物学や細胞のがん化においては非常に重要なポイントになります!
例えば、喫煙がきっかけで損傷を受けたDNAの場所が、たまたま細胞増殖のブレーキを司る遺伝子で、たまたま修復に失敗したとします。
すると、細胞増殖のブレーキ遺伝子は異常な遺伝子となり、正常なブレーキ因子(タンパク質)を作り出すことができなくなります。
これにより、細胞はブレーキ機能を失ってしまい、必要がないのに増殖を繰り返す異常な細胞へと変化します。
昨日の日記で書いた通り、これだけではがん化していません。ここでもう一度、細胞がん化の要因リストを示しておきます。
ブレーキが壊れたことで、細胞の分裂速度は加速します。
ここでまた重要なのは、DNA損傷を修復する際には、正常な細胞は必ず分裂を停止させます。細胞分裂しながらDNA修復をすると異常が起きやすいのです。
しかし前述のとおり、ブレーキが壊れた細胞が再度DNAを損傷した場合、DNAの複製や分裂をしながらDNA修復を行う可能性があるため、更なる異常が起こりがちです。
そして異常が積み重なっていくことで、運悪くテロメアを伸ばす能力を獲得してしまったり、アポトーシスに重要な遺伝子が傷ついてしまうこともあります。
そうなってしまうと、最終的には上記リストのすべてにチェックがついてしまい、細胞が無限増殖能力を獲得した状態、つまり細胞ががん化してしまうのです。
がん化してしまった細胞のDNAは異常が積み重なっているため、元の自分の正常な細胞のDNAとは大きく違ったものになってしまうケースもあります。
これこそが、がん細胞が悪性新生物と呼ばれる所以なのです。
これで私が説明したかったことはだいたい解説しました。無理やりタバコを絡めながら(笑)簡単に流れをまとめると、
こんな感じになります。このシリーズ日記で書いたことをさらっとイメージできるのであれば、かなり研究に向いてると思います!
これは余談ですが、DNA修復の失敗が生物学にとって重要なポイントだと言いましたが、この失敗が生物の進化につながる場合もあります。
ヒトは高度に完成された生物ですが、例えば大腸菌や酵母などの単細胞生物は、1つの遺伝子異常で死ぬ可能性もある一方で、奇跡的に過酷な環境に適応できる能力を持つ可能性もあります。
そうやって、非常に長い時間をかけて異常が積み重なることで、まったく別の生物へと進化することもあるのです。
がん細胞は怖いですが、やっぱり生物学って面白いですね!
▼タバコとがん細胞シリーズ完結!
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