カクテルグラスに注がれたお酒の中に、生牡蠣をそのままドボン、そして一気にグイッと飲み干す。想像するだけで「オエッ」っとなりそうだが、これが衝撃的な美味しさだったのです。
今回はタイトルで便宜上「オイスター・ブラッディ・マリー」と紹介しましたが、このカクテルの正式名称は「ブラッドレス・マリー」もしくは「ブラッドレス・シーザー(稀にブラッディ・シーザーと呼ぶ場合もある)」。筆者が行ったお店では、「ブラッディマリー・オイスターシューター」という名前でメニューに掲載されていました。
今回は、今まで人生を損してた!と思うほどの美味しさを皆さんにご紹介すると共に。この生牡蠣入りカクテルの情報や名前の由来についてご説明したいと思います。
生牡蠣が食べたくなって滑り込んだは新宿のオイスターバー。とりあえずビールと、生牡蠣16ピースと・・・ん?なんだこれ!?あ、えっと・・・とりあえず、それだけでいいです!!
と、通常通り注文し、もう一度メニューによく目を通す。
「ブラッディマリー・オイスター・シューター」とな?
ウォッカとクラマトで生牡蠣を一口で流し込む・・・か。いやちょっと待てクラマトってなんだ?僕だってブラッディマリーくらいはわかる、これはトマトジュースを使ったカクテルの名前だ!
カクテルに生牡蠣が入った飲み物!?全然想像できない!!ちくしょう!怖いけど好奇心には勝てない!とりあえず注文だ!!
あ、すいませーん。えっと、あの、この〜、ブラッディマリーオイスターシューターっていうのを、はい、あの1つ、え〜っと、お願いします〜。 |
普段言い慣れない言葉すぎてたどたどしくなってしまったが、とりあえず1分くらいで先ほど頼んだ「生牡蠣入りカクテル」なるものが目の前に到着する。
ほほう・・・これか。ショットグラスに入っておるのか・・・。
確かに、生牡蠣がガッツリと鎮座しておる・・・。
レモンをしぼりまして・・・
グイッと行きましょう!
なんか不思議な感じ。
これは、大変美味であるぞ!もう一杯注文しよう!!
想像以上に美味しくて、今まで知らなかったことを後悔してしまったこの生牡蠣入りカクテル。
味を表現するならば「魚介出汁を使ったトマト風味の冷静スープに、レモンを絞ったさっぱり感と、ウォッカのもつアルコール感が牡蠣の生臭さを抑え、ミルキーな生牡蠣が全体を包み込む・・・・・」そんな味。
なるほど確かに、ブラッディマリーは野菜スティックをつけた状態で提供されたり、中にコンソメを入れたりすることもあるスープ系のカクテル。ここにクラマトとかいう謎の液体が良い仕事をしているのだろう。
興味が湧いた僕は、この「牡蠣入りのブラッディマリー」について調べてみることにしました。
通常、ブラッディ・マリーというカクテルは、グラスに注いだトマトジュースに、ウォッカを注いでアルコール度数を調整し、レモンを添えるという、いたってシンプルな作り方のカクテルです。
しかし、牡蠣入りのブラッディ・マリーに使われるブラッディ・マリーは、日本で一般的に知られているカゴメのトマトジュースのようなタイプではない「クラマト」と呼ばれる貝類の出汁を使って作られたトマトジュースを使用します。
そこに、殻から出した剥き身の生牡蠣を、牡蠣の汁と共にブラッディ・マリーの中にドボン。そうすると浸透圧によって、牡蠣の中に含まれる旨味たっぷりの水分がカクテルの水分と入れ替わって味が染み出す。
あとは、通常のブラッディマリー同様に、タバスコや黒胡椒などのスパイスを自由に使用して美味しくいただく・・・というカクテルです。
トマト、タバスコ、黒胡椒、レモン、どれをとっても生牡蠣との相性は抜群。タバスコに至ってはそもそも牡蠣のためのソースとして作られたなんて説もありますから、そりゃ美味しいに決まってるか!「カクテル=甘いお酒」という先入観が良くなかっただけですね!
このカクテル、ブラッドレス・マリーって呼んでみたり、ブラッドレス・シーザーって呼んでみたり、はたまたブラッディ・シーザーって呼んでみたりと、全く統一感がなく、諸説ありすぎて困ってます。
そもそも、メリーなのかメアリーなのかでグチャグチャしてますし。
ここからは僕の憶測も多分に含まれますので、話半分に聞いてくださると幸いです。
さて、そもそも牡蠣入りカクテルのベースとなったブラッディ・マリー。
アメリカの禁酒法時代に作られたカクテルであり、トマトジュースに血の色を重ね、カトリック復興のためにプロテスタントを迫害しまくったイングランドの女王「メアリー1世」に由来し「ブラッディ・マリー(血まみれのメアリー)」という恐ろしい名前がつけられています。
ま、これも諸説あるため確定情報ではないのですが・・・。
さて、先ほどのブラッディ・マリーというカクテルは、トマトジュースを血の色に見立ててこの名前がつけられたわけですが、牡蠣入りのブラッディ・マリーには「トマトジュース」ではなく「クラマト」が使われています。
ってことは、ブラッディではなくブラッドレスなのでは?ってことで、牡蠣入りカクテルは「ブラッドレス・マリー(冷血なメアリー)」と名付けられました。こっちもこっちで恐ろしい名前ですね。
そしてもう1つ。牡蠣入りブラッディ・マリーをブラッディ・シーザーと呼ぶこともあります。
メアリーが女性なら、牡蠣を入れたら男性のシーザー(ローマの将軍ユリウス・カエサル)になるっていう言葉遊びだと思います。しかしこの言葉のせいで、ブラッドレス・シーザーという呼び名も生まれてしまってややこしくなっているわけです。
しかしこの名前。海産物に詳しい人ならピンとくるかもしれませんが、「性別が転換する」という切り口は牡蠣を扱うカクテルとして、非常に面白い名前なのです。
なぜなら牡蠣は性転換をする生き物。生涯の中で、オスの時も、メスの時も、オスでもメスでもない時もあります。繁殖期になるとオスとメスに別れて生殖し、繁殖期が終わると中世化するという生き物なのです。
なので、ブラッディ・マリーが、牡蠣を入れると性転換してブラッディ・シーザーになるという名前は、非常に面白い名付けと言えます。
現在の価格はコチラ |
クラマトは、ハマグリエキスとスパイシーな香辛料を合わせたトマトジュースであり、メキシコの伝統的なドリンクです。クラマトという名前は、ハマグリやアサリなどの小型二枚貝を表す「クラム(Clam)」と「トマト(Tomato)」を掛け合わせた造語です。
日本では全く馴染みのない飲み物ですが、アメリカなんかだと結構定番のトマトジュースとして一般家庭にも普及しているそうで、弊社で唯一長期的なアメリカ留学をしていたアキラ氏に聞いてみたところ、向こうではパスタを食べるときやパーティーの時に冷静スープ的な使い方良く飲んだとのこと。
二日酔いの時なんかも朝食がわりに飲んだそうです。
クラマトの中でも特に有名なのが「モッツ(MOTT’S)」というブランドで、日本のスーパーなどではあまり見かけませんが、輸入食品を扱うカルディなどの店舗や、アマゾンなどのオンラインショップで購入することができます。
ぜひ、新鮮な生牡蠣が手に入ったら、クラマトを手に入れてご自宅で牡蠣入りブラッディマリーを作ってみてくださいね!
っていうか、僕は完全にこの味の虜になってしまったので、牡蠣がなくてもウォッカのクラマト割りを飲みたいと思います。蔵馬とが手に入らなかったら、トマトジュースにコンソメを混ぜてみても代用できそうですね、色々と試したいと思います。