なにを隠そう、僕は「煮こごり」が大好きである。ブリ大根を作ったら残りの汁を必ず煮こごりにするくらいは煮こごりを愛していると胸を張って宣言できる。
そんなある日、急に思いついたのである。食品のゼラチン質が煮こごりを生み出すのであれば、牛スジ肉使って煮こごりを生み出したら、地球の崩壊を回避することができるのではないだろうか?と。
(※この記事を執筆する時点では僕が神からの天啓を授かり独自に編み出したと思い込んでいますが、後ほどネットで検索したら案の定すでに牛スジ肉の煮こごりレシピは多数存在していました。)
そして完成した「牛スジ肉の煮こごり」を食べた瞬間、止まっていた歴史は動き出したのである。
まさに、今僕が記事を執筆しているこの時間は「牛スジ肉の煮こごり以降」と呼んで良い時代なのである。そう、歴史はこのレシピが誕生した時を界に、牛スジ肉の煮こごり以前と以降という2つに分けられたのだ。
そんな、一子相伝唯我独尊波羅蜜多心経の激ウマ天才レシピだが、株式会社PLANのブログ「PLOG」を愛読してくださっている読者様だけに特別に伝授したいと思います。
まずは「そもそも煮こごりって何だ?」という人のために、簡単に煮こごりについて紹介しましょう。
例えば、多く作りすぎた「ぶり大根」を冷蔵庫に入れて保存していたら、いつの間にか「ゼリー」のようになってしまっていた、という経験はないでしょうか?簡単に言ってしまうと、それが「煮こごり」です。
ゼラチン質の多い食材の煮汁が冷えてゼリー状になる性質を利用して作ったり、またはゼラチンパウダーを入れることで強制的にゼリー状にしたりする料理のことを、煮こごりと呼ぶのです。
和食では「煮こごり」という言葉を使いますが、洋食では「ゼリー寄せ」とか「テリーヌ」って言われたりもします。
で、本題と言える今回の牛スジ肉ですが、牛スジ肉のゼラチン質はコラーゲンですから、牛スジ肉を煮込んだ煮汁も煮こごり化できるってわけです。一般的に煮こごりというと魚を使う料理のイメージですが・・・牛スジ肉でも作れるって訳なのです。
さて、今回「牛スジ肉の煮こごり」に使用するイカレたメンバーはコイツらだ!
というわけで材料はこんな感じです。この他にも、ネギや生姜、七味などを使って調味してみても良いかもしれませんが、今回はそういう応用一切なしの直球勝負で作っていきます。
コメマークで「ゼラチン」とありますが、予想ではゼラチンなしでも牛スジ肉から溶け出したコラーゲンによって煮汁が凝固して煮こごり化すると思われたのですがうまく行かず、仕方なく市販のゼラチンパウダーを使って凝固させたからです。
牛スジ肉には、アキレス腱、ハラミすじ(メンブレン)、赤身すじの3種類があって、今回は赤身すじをメインに使用しました。おそらくアキレス腱をもっと使えば綺麗に煮こごり化したんだと思います。
ですので、アキレス腱以外の牛スジ肉を使って作る場合は、市販のゼラチンパウダーも用意しておくのが良いでしょう。
というわけで、牛スジ肉の煮こごりを作っていきましょう。作り方はいたってシンプル!以下の5ステップで完成です。
それぞれの手順ごとに、美味しく作るためのコツや注意すべき点がありますので、手順ごとに写真付きで詳しくご紹介していきたいと思います。
買ってきましたは牛スジ肉(赤身すじ)。牛スジ肉の中でも、最も旨味や出汁がでる部位なので、きっと牛スジ肉の煮こごりにはぴったりだと思います。
巨大なサイズのまま鍋に放り込んで作ってやろうかと思いましたが、完成した煮こごりの中で筋が固くて切れないなんて事になっては困るため、ある程度細かく手頃なサイズまでカットする事にしました。
実際完成してみたら、巨大なサイズのままでも切れそうなくらいまで柔らかくなっていたので、次回作るときはカットせずに煮込むかもしれません。心配な方は僕みたいにカットするのがおすすめです。
「アクは旨味の一種」なんて説もあるため、僕も牛スジカレーや牛スジ土手煮を作るときにアク取りはしませんが、関東風おでんを作るときや煮こごりなど「透明感」が重要な料理の時はしっかりと下処理を行います。
この「下処理」をおろそかにしてしまうと、牛スジ肉の煮こごりから透明感が奪われてしまい、大人の階段を登ってしまった少女のように、世界に絶望してしまった主人公のように、死んだ魚の目のようになってしまいます。
まずは、たっぷりのお湯を鍋で沸騰させた後に、先ほどカットした牛スジ肉をドボン。その後も火を弱めずに加熱していきます。
しっかり沸騰させて1分間ほど放置すると、こんな感じでガッツリとアクが浮いてきます。このアクを放置してしまうと、透明感がウリの清純派な煮こごりが濁ってしまうので要注意です。
旨味を逃したくない場合は、これをチマチマとアク取りしていくのですが、僕は大変面倒くさがりやなので、アクが出た後の牛スジ肉をザルに開けて軽く流水で洗っちゃいます。
はい、こんな感じですね。キレイキレイしちゃいましょう。
鍋にもアクが付着してしまっているので綺麗に洗い、新しく水を張って軽く温めておきます。
水800mlに対して、日本酒を150ml程度入れて煮込みます。
圧力鍋を使用すれば30分程度、通常の鍋で煮る場合は二時間程度が目安です。
鍋に蓋をしつつ吹きこぼれないように火加減を調節しながら、火事に注意して煮込みましょう。途中で水分が減ってしまったら水を追加してあげます。
〜2時間後〜
しっかり煮込んで牛スジ肉が柔らかくなったら、今度は煮汁に味をつけていきます。醤油を100ml程度、あとで味見して足りなく感じたら追加しちゃってください。
みりんもたっぷり入れちゃいましょう。今回は250ml入れました。
牛スジ肉の煮こごりにおける名脇役といえば砂糖です。入れすぎるとお菓子になっちゃいますが、ちょっと多めに入れると醤油の辛さと砂糖の甘さで天国からお迎えがきてパトラッシュします。
最高です。
もうこの時点でやばい美味しそうです。浴槽いっぱいに作って肩まで入って100数えたいくらいのビジュアルです。
煮込み料理というのは、基本的に加熱すると食材が柔らかくなり、冷ますと食材が固くなります。この、食材が冷えて固くなっていくときに周囲の「味」を食材が吸収して美味しくなっていくのです。
カレーを寝かせると食材に味がしみるのと同じです。
コンロの上で放置していい感じに粗熱が取れたら、今度は冷蔵庫で冷まします。
熱いまま冷蔵庫に入れると、冷蔵庫内の食材が痛んでしまって怒られるので注意が必要です。
食材から溶け出したコラーゲンは20℃以下で固まり始めます。また25℃くらいから固くずれが始まりますので、とりあえず冷蔵庫に入れて半日程度放置すれば固まります。
そんなに待てないぜ!っていう人は、小分け用のタッパーなどに入れれば一時間程度で固まってくれます。容器が大きけ大きいほど固まりにくいので、今回みたいに鍋ごとやるのは非効率的です。
しかし、バケツプリンみたいになるのでテンションは上がります。
〜6時間後〜
さて・・・冷蔵庫に入れて6時間が経過したし、そろそろ固まってるだろう・・・。
全然固まっておらぬ!!
これは・・・失敗か!?もっとコラーゲンの多いアキレス腱などの部位を使わなければダメだったのか?それとも水の量が多すぎたのか!?いやしかし・・・このままではただの牛スジ肉の時雨煮になってしまう・・・。
とりあえずツマミ食い・・・。
ウマス!!
いやダメだ!
このままでは時雨煮の状態で平らげてしまいそうだ・・・。よし、今回は食材から滲み出るコラーゲンだけで煮こごりを作ろうと思ったが、背に腹は変えられぬ・・・特別ゲスト「クックゼラチン」に登場してもらおう!!
これさえあれば、コラーゲンの少ない食材でも煮こごりにできてしまうという、煮こごり好きなら常に家に常備しているであろう便利グッズが「モリナガのクックゼラチン」である。
今回のように「うまく煮こごり化できなかった」時は、これをささっと入れて冷蔵庫で寝かせれば、蒟蒻ゼリーのごとくプルンプルンな状態になるのである。まさに神器!
ちなみに、液体をゼリー状に凝固させるアイテムには以下の3種類があります。
どれもゼリー状になるのですが、食感や凝固温度に違いがあります。
カンテンでは食感がサクサクしすぎますし、アガーでもまだ煮こごりの「口溶け感」は再現できません。やはりゼラチンが最強です。
「カンテンで作る煮こごり」とかいうレシピが巷に溢れていますが、正直カンテンで作った煮こごりは、とてもマニアックな味になります。個人的には全然美味しいと思わないので、初心者は絶対ゼラチンで作ってください。
使い方はこんな感じ。詳しくは購入して読んで欲しいのですが、簡単にいうと「250mlの水に対して5g程度入れればゼリーになりますよ」って事です。
今回は800ml程度の水を使用しているのと、牛スジ肉からコラーゲンが溶け出しているはずなので、3袋(15g)のゼラチンパウダーを使用します。
80℃以上に温めれば、鍋に直接ゼラチンパウダーを投入してもダマにならないので、とりあえず牛スジ煮込みを温め直して、ゼラチンパウダーを入れてよく混ぜて、もう一度粗熱が取れるまで放置して冷まします。
粗熱が取れたら冷蔵庫に入れておしまいです。六時間くらいあれば固まる予定ですが、今日はもう疲れたので寝たいと思います。
明日の晩酌は、黒ビールと牛スジ肉の煮こごりです、もうすでに楽しみすぎてやばいです。
さて、クックゼラチンによってバッチバチに固まっている煮こごりを取り出しましょう。
お湯を貼ったフライパンなどに鍋ごと入れると、鍋と接している部分の煮こごりが溶けるので鍋を逆さまにするだけでプッチンプリンよろしく、プルンと取り出すことが可能です。
見よ!
この圧倒的ビジュアルを!
とりあえず、大きすぎるので4等分にしました。
素晴らしい見た目です。
美味しい、うまい、ムムム・・・どれも牛スジ肉の煮こごりの前にはチープな賛美表現でしかありません。もっとこう、電撃が走るような・・・その・・・いや難しいですね。
あえて、この味を表現するのであれば
尊い!!
というのが正解でしょう。
とりあえず、炊きたての玄米に乗せてみました。
あああああ・・・・溶ける・・・。
脳が溶けていく・・・。
大脳皮質に直接語りかけるような味・・・。
かゆ・・・うま・・・(^q^)
ごちそうさまでした!
是非みなさん、牛スジ肉の煮こごりを作ってみてくださいね!