男の人なら共感できるはず。半年に1回程度は「肉を長時間煮込みたい」という衝動に駆られるのです。そう、肉を煮るというのは男のロマン!ということで、今回は40時間肉を煮るという行為に挑戦してみました。
何もすることが無い週末、料理が美味しくできれば彼女や奥さんやお子さんも喜んでくれますから、ゴルフにいくよりは喜ばれるはず!ってことで、一緒に肉を煮込みませんか?
世の中にはロマンが溢れている。特に女性には理解されにくい男のロマンと言われるものは、意外にも日常の身近な所に溢れているのである。
男の三大ロマンといえばこれだ!
どれも、狩猟民族的な人間の原風景を思わせる行為である。
シルバーのリングを磨くのはもちろん、包丁などの刃物を手入れすのも男のロマンである。もちろん、レザーアイテムやデニムなどのエイジング、つまりは経年変化というのは数多の男たちの心を掴んで離さない。
そして僕はこれを提唱したい。「肉を長時間煮る」という行為である。女性の多くは「だったら高級な柔らかい肉を買えば?」と思うかもしれないが、それにロマンが存在するだろうか?
いやない!
固い肉を食べられるように柔らかくするというのは、男の本懐といっても過言ではないのだ。男たちよ今こそ目覚めるべきだ!今週末は肉を煮込もうではないか!
さてさて、そんな男のロマンを叶えるために、先週末は「肉のハナマサ」にて冷凍の牛スジ肉を狩猟してきた。牛スジ肉ってのはいわば「筋肉と腱」である。男の肉って感じだろう。
脂肪分が異様に少なく、タンパク質が超豊富な、肉のダイヤモンド(硬度的に)である。
もちろん、ちょっと高価な包丁くらいでは歯が立たない。さっき研いだばかりの包丁ですら、全体重をかけてノコギリのように使わないと切断できないのだ。か弱い女子やお子様にはさせられない作業だぜ!それもまた男のロマン!
国民に対し食肉に関する知識及び情報の提供している、公益財団法人日本食肉消費総合センターのホームページに、こう書いてありました。
『じっくりコトコトが鉄則!弱火で長時間煮込む!』
肉のすじや結合組織は、長く煮込めば煮込むほど、とろけるようにやわらかくなるので、 状態を見ながら長時間(最低2時間)煮込むほうがおいしく仕上がります。
ほほう、なるほどなるほど。
しかし、男のロマンを叶えるのにたった2時間か・・・。こちとら、本革のベルトやデニムジーンズがいい感じになるのに5年近くかけてるってのに、たったの2時間ではロマンの入り口までしか体験できないのではないか!?
うむ。ならばその20倍だ。
フリーザには通用しなかったが、我らが孫悟空ですら限界だと感じさせた20倍のパワーを見せてやろう。2時間の20倍だから、今回は40時間である。
ふふふ、確かに敵はフリーザ級の防御力を誇る海外産の冷凍牛スジ肉だが、オラの20倍界王拳煮込みには耐えられまい!!
カラダもってくれよ!!
くっ・・・オラ、こんな硬い肉、切ったことねぇぞ!!
っていうか、これはもはや、肉というよりも骨に近いような・・・。流石に2時間煮込んだごときでは太刀打ちできる相手ではない・・・。
か・・・界王拳を20倍までなんとか引き上げるしかねぇ・・・。カラダがもたねえかもしれねえが・・・。
なんか、中央部分に「俺は絶対に柔らかくならん!」って主張している真っ白な奴がいますが・・・。とりあえず柔らかくなることを信じて煮込んでいきましょう。
実をいうと、夜ご飯を食べながら、たらふくビールを飲んでいい感じに酔っ払い、なんか男のロマンとか言ってたら急に肉が煮込みたくなって、近所のハナマサに牛スジを買いに走った訳で、現時点で時刻は深夜1時。
寝ることをうっすら忘れて男のロマンを噛み締めてたら、女のリアルが僕を襲う。「あのさ、勇太君、これまさか、煮込みながら寝るつもり!?」
確かに嫁のいうとおりだ、そんなことしてたら明日目が醒める前に火事で死ぬ。うーんどうしよう、しかしここまで来て界王拳ビーフシチューを諦めたくない・・・。
まさに僕としてはポタラが手に入ったような気分です。牛スジ肉と炊飯器の融合。まさにそれは奇跡の出会いと言っても過言ではないでしょう。
さあ、耳につけるんだ!
おれは炊飯器と牛スジ肉が合体した
スイハジニクだ!!
一回真面目な話に戻しますと、シャープ製の多くの炊飯器は、保温にしておくと70℃プラマイ3度をキープしてくれます。
70度であればほとんどの菌類が死滅する温度ですし、じっくりと熱が通るためお肉の旨味も抜けずらく柔らかくなっていくそうです。ってな訳で、これで40時間を目指します。
ふふふ、これでゆっくりと寝られる!
ここまでの作業にかかったのは、たったの13分。40時間後が楽しみだぜ!
ちょっと寝すぎました。10時間も経過してるじゃないですか。
しかし炊飯器ってすごいですね。米を炊くだけじゃなくて煮込み料理の定温調理までできてしまうなんて。火事になる心配もないし焦げる心配もありません。電気式圧力鍋買おうかしら・・・。
ガス台の上に鍋を置いてコトコトしてると、なんだか水分量とか焦げ付きとかが気になって仕事に集中できないのですが、炊飯器を使って煮込んでいるとしっかり集中してお仕事ができますね。素晴らしい。
なんなら、この後トレーニングしにお出かけまでしちゃいました。ガス台で煮込み料理を作っていたらこうはいきません。最高ですね!
そうこうしているうちにこの日も終了。長いようで短い1日半が過ぎ去ったのです。
さて、ついに界王拳20倍までインフレした煮込み力。
まるでダイヤモンドのような硬さだったフリーザ級の冷凍牛スジ肉はどうなったでしょうか?まさか、まだカチカチなんでしょうか?
うほっ!
とろっとろのプリンプリンになってやがる!赤身肉の部分はホロッホロや!これはたまらん!
ニンジンと〜、タマネギと〜、ジャガイモを切って入れて〜。マッシュルームをダイレクトに入れて〜。そこに界王拳でボコボコにしてやった牛スジ肉を入れて〜。
ビーフシチューのルーをダイブ!!
ちなみにですね、煮込み料理ってのは「一度冷やす」と味がしみて美味しくなるのですよ。
浸透圧っていうのがありまして、これは「同じ濃度になりたい!」っていう力なんです。ビーフシチューの味の濃度と、中身の具材の味の濃度がですね、一緒になりたい!って共感し合ってる訳です。
汁を冷ますとですね、具材と煮汁の味の濃度が一緒になりたい!って共感しあって、具材にできた細胞膜の間に入っていく訳です。なので、しっかり煮込んだあとは冷やして休ませましょう。
イメージ的には、界王拳でボコボコにされた牛スジ肉が、休憩中にビーフシチューを飲んで水分補給するって感じでしょうか。ま、そういうことにしておきましょう。
うむ。素晴らしい出来である。
やっぱり、ビーフシチューに生クリームは欠かせない!
うむ。申し分のない味わいである。
っていうか、解凍した牛スジをカットしていた頃は「これ、ちょっとやそっと煮込んだくらいじゃ文字通り歯が立たないんじゃないか!?」って思うほど固かったんですけどね。
流石に40時間も煮込んだら、コンビニのおでんの牛スジよりも柔らかい食感になりました。牛スジ肉を巨大なまま入れたのも功を奏したようで、最高のうまさになってます。
それとですね、このビーフシチュー自体が神々しい液体に変貌しています。牛スジを40時間煮込んだおかげで染み出した旨味たちが大合唱していてですね、口に入れた瞬間耳の鼓膜が破れるんじゃないかっていうほど脳みそに向かって大声を出すんですよ。
尊い・・・・・。
せっかくですから、20倍界王拳を食らった牛スジの1/3を、関東だしで煮込んでおでん風に仕上げてみました。っていうか、僕の人生において初めての牛スジとの遭遇はおでんだった気がします。
実家の近所にあるお好み焼き屋さんに「おでん」ってのがあって、小学1年生くらいだったでしょうか?そこの牛スジを食べた瞬間「あ、もう肉は牛スジだけでいいな」って本気で思いました。
さて、界王拳おでん牛スジはどんなもんでしょう。
うむ、控えめに言って尊いですね。旨味が強すぎて、おでんでは無いですね。和風ラーメンのスープって感じでしょうか。
いやもう旨味の応酬に脳がバグり始めてます。
俺が牛スジなのか牛スジが俺なのか、だんだんわからなくなってきました。
いや、もう世界のほとんどは牛スジなんじゃ無いでしょうか?っていうか牛スジと他の肉って何が違うんでしょう?ほとんどの食肉は牛スジの下位互換であり、牛スジに含まれるのでは無いでしょうか?ってことは、僕の体にある肉も牛スジってことでしょうか、そうなると僕が牛スジを食べているのではなく、牛スジが僕に戻ろうとしているのでそうか。
僕が牛スジを食べたいっていうのは僕の脳がそれを選択したのではなく、牛スジが僕に食べられることを選択したのでは無いでしょうか、ってことは牛スジをコントロールしたのは僕かもしれません。
つまり、牛スジは僕?
※この記事は、2017年11月20日、牛スジだけが置かれていた谷口勇太の家にあったメモを元に執筆された記事です。