ブログやメディアの記事に華を添える「写真」や「画像」ですが、弊社には文章が書けても画像のチョイスがイマイチだという社員が結構多くて困っています。
確かに、今までの人生でカメラにハマって見たり、レイアウトに興味を持ったりしなければ、「何を持って美しいとするのか」っていう基準が自分の中に作られないため、直感任せになってしまいますよね。
というわけで今回は、「黄金比」や「分割構図」といったレイアウトの基本から、写真を美しく見せるための基本的な構図についてご紹介しますので、写真撮影の技術を向上したい人や、ブログなどに使用するアイキャッチ画像のクオリティを上げたい人はぜひ参考にしてください。
人間が美しいと感じてしまう比率と言われるのが「黄金比」と呼ばれる近似値1:1.618、約5:8の比率です。
この比率に基づいて写真を撮影したり、画像をトリミングすることによって、写真や画像の中に数学的な整然とした美しさが宿ります。
黄金比と聞くと真っ先に浮かぶのが、アンモナイトのような螺旋ではないでしょうか?これは黄金比を利用した長方形のなかに正方形を生み出し続け、対角線を曲線で繋いだ「フィボナッチ螺旋」と呼ばれるもので、これもまた美しいレイアウトの代表として使用されます。
なぜ黄金比は美しく感じるのか。
一説には「視覚情報の処理速度」と言われています。
人間の目は、常にあらゆる情報を脳に送信しており、脳は常に大量な情報に晒されています。その中で「黄金比」によって構成されたイメージというのは、他のものよりも脳が早く処理できるため、脳は黄金比構図に美的快感をもたらすのではないかとされています。
もちろん、人が美しいと感じるのは黄金比だけではありません。脳の情報処理速度がイメージに対する美的快感であるなら、ある一定の法則で構成された視覚情報というのは美しく感じるはずです。
この、黄金比以外の美しく見える比率には以下のようなものがあります。
これらの計算が面倒な場合は、こちらに非常に便利なサイトがありますので、デザインやレイアウトに活用する場合は利用してみるのがおすすめです。
さて、「美しく感じる比率」について理解できたところで、ここからは写真を撮影するときの構図や、画像を切り抜く時のトリミング構図に応用して行きたいと思います。
「構図」のメリットは、ある種の自由さを犠牲にし、一定のルールに則ることで、数学的で整然とした美しさを写真や画像にもたらす事ができるという点です。この基本を忘れないようにすれば、今回紹介する以外の独自の構図を見つけられるかもしれません。
しかし、魅力的な写真は「何本も引いたグリッド」や、ルールに縛られた「比率」によってのみ生み出されるわけではないという事も覚えておくと良いでしょう。あくまで構図というのは美しく魅せるコツであり、魅力的な写真を生み出す方法ではないのですから。
「誰でも写真が上達する方法!」みたいな本を買うと、まず最初に書かれているのが、三分の一の法則に基づいて作られるグリッド、三分割法構図です。
葛飾北斎が生み出したと言われる「三ツワリの法」がこの三分割法構図であり、画面を縦横に三分割して視覚的なアクセントとなる対象物を線が交差する部分に配置する事で美しく魅せる技法です。
例えばこの写真を、三分割法のグリッドに当てはめてみましょう。
スプーンやクッキーを交差する点に配置し、テーブルの端を分割した線に合わせて配置します。
すると、とてもバランスの取れた配置となります。
写真構図の基本原則とも言える「三分割構図」のバリエーションとして有名なのが、黄金律(=ファイ)を利用して作られたファイ・グリッドです。
黄金比を利用したファイ・グリッドと、葛飾北斎も愛用した三分割法のグリッド。どちらの方が美しいのか?というのは永遠の議題であり、今でも様々な議論が交わされています。
個人的な意見としては、ファイ・グリッドは中央にアクセントとなるものが集まりやすいので、「ダイナミックさ」をアピールしたいときに使い勝手が良く、三分割法はアクセントとなるものを全体にバランスよく配置できるため「充実感のある絵」を作るときに便利だと思っています。
例えば、なんとなくスマートフォンなどでとったスケボー中の男性の写真。
アクセントとなるスケボーや男性の足、地面の平行感を生み出しているブルーシートなどをファイ・グリッドの交差する点や線に当てはめてみましょう。
トリミング前の写真よりも明らかにバランスがよくなったのがわかると思います。
鉄道写真家の中井精也さんによって考案、提唱されているのがレイルマン比率と呼ばれる構図です。
縦線4本で横に4分割し、対角線を引いて縦の線と交わる点にアクセントとなる被写体を配置する事でバランスをとる構図となっており、三分割法に比べて中央部分大きく、ゆったりとした写真になります。
そのため、風景を撮影したりする場合に相性が良いという特徴があります。
どことなく、見所が右に偏ってしまってバランスの悪いこの写真。
道路、手前の標識、空、崖のアクセントとなる部分をレイルマン構図に当てはめてみます。
すっきりとして安定感のあるレイアウトになりました。
三分割法構図と異なり、上下もしくは左右が均等になるよう、中央で2分割した構図を2分割構図と呼びます。
風景写真などに使用するとインパクトのある画像になりやすいのですが、アクセントとなる対象物を配置できる場所が少ないため、特徴のない写真になりがちな難しい構図でもあります。
例えば、このような景色であれば、中央でくっきりと分ける事で斜張橋最大の特徴とも言えるケーブルと、高所から見下ろす広々とした景色を2分割で見せることが可能です。
画面中央に道路の末端の中央を配置して、2分割構図に当てはめます。
バランスよく、そしてインパクトのある配置になりました。
上下、もしくは左右に「シンメトリー」な状態を作る構図です。
二分割構図によく似ていますが、これはあくまで「中央の被写体に対して左右や上下が線対称となる構図」を指しています。この構図を美しく魅せるには、しっかりと水平や垂直を出すことがポイントとなります。
日本では「逆さ富士」などが代表的なシンメトリー構図と言えるでしょう。
例えば、ファイ・グリッドで撮影された綺麗なこの写真を、バランスよりもインパクトを重視してシンメトリー構図にしてみたいと思います。
中央に塔ののてっぺんを持ってきて、水平線をしっかりと平行に合わせます。
三分割構図やファイグリッドにはないシンプルでインパクトの強い一枚になりました。
被写体のアクセントとなる部分を画面の中央に持ってくる構図を日の丸構図と呼びます。
テクニックを知らない初心者が撮影すると、どうしてもこの「日の丸構図」になりやすく、構図の狙いを理解していないとイメージが相手に伝わりにくかったり、躍動感のない単調な写真になってしまいます。
そのため「日の丸構図www」とバカにされがちですが、上手に活用すると被写体をダイナミックに撮影でき、インパクトの強い写真を撮ることができるので、コツを覚えておくと良いでしょう。
例えばこんな感じの「アクセントとなるもの以外が同系色でぼんやりする」ような場面は、日の丸構図が大活躍してくれます。
中央のアクセントとなる対象物から、上下や左右ができる限り対称となるような色だったり配置だったり被写界深度だったりすると、より日の丸構図が際立ちます。
おもわず花火の美しさに吸い込まれるようなバランスです。
奥行き感を引き出すのに最適な構図がこの「三角構図」です。
三角形の頂点を消失点として考えるこの構図。今回のレイアウトの参考としては画面の中央最上部に消失点を配置しましたが、この消失点は左右に移動させても大丈夫なので、被写体やイメージに合わせて設置したり、ファイ・グリッドや三分割構図と組み合わせて使うのもおすすめです。
特に、高層ビルや、階段、滝、道路、といった写真との相性が良く「どこまでも続くような」雰囲気を写真に落とし込むことができます。
例えばこの、ターミナルを写した写真。どことなく三分割法っぽい構図を感じ取れますが、エスカレーターの奥行きに注目して三角構図で切り抜いてみたいと思います。
歩いている女性が頂点に来る様に撮影できたら理想的だったのですが、妥協します。
元の画像よりも、伝えたいイメージが具体的になり、写真がグッと引き締まりました。
対角線を使用して斜めに分割すると、躍動感や広大さを出すことができます。特に道路などの人工建造物など、直線的な被写体を撮るときは「対角線構図」が使用されることが多いので覚えておきましょう。
景色や被写体を見たときに「直線」を感じることができたらそれを対角線に当てはめて撮ってみると決まりやすいです。
今回は右上から左下に向けて対角線を引きましたが、もちろん左上から右下に向けた対角線でも問題ありません。
例えば、愛し合う二人が森の木かげでイチャつくこの写真。右上から左下に向けて、なんとなく対角線がイメージできませんか?
写真を拡大して、この対角線に合わせてレイアウトしてみましょう。
最初よりも伝えたいものが前面に押し出されて、力強い印象になりました。
黄金比の代名詞とも言えるこの曲線。正式名称は「フィボナッチ螺旋」と言われ、黄金比によって作られた長方形の中に正方形を配置し、対角線を曲線で繋いでいくとこのような形になります。
この曲線を意識してアクセントとなるものを配置する事で、人間の視線はフィボナッチ螺旋に合わせて自然に末端へ導かれます。
画像を切り抜いてトリミングするときには使いにくいですが、写真を撮影する時の構図としては使い勝手が良いので活用してください。
例えば広告などにありがちなこの写真。そもそもこの被写体となっている女性のポージングがフィボナッチ螺旋を意識した形となっているため、この時点でかなり美しく見えてしまうのですが・・・。
写真の構図として当てはめてみるなら、こんな感じが理想的ではないでしょうか。
非常にバランスが良いと思います。
さて、写真の撮影や画像の切り抜きに、黄金比や分割法を用いた構図が有効であることは理解していただけたと思いますが、様々なデザインやレイアウトにも応用できるというのもご紹介しておきたいと思います。
そもそも名刺自体のサイズが黄金比となっているため、名刺の内容のレイアウトは黄金比をベースに配置するとすっきりした仕上がりになります。
また、黄金比を用いたレイアウトは、単調なレイアウトになりにくく、それでいて安定感や堅実的なレイアウトが可能になるためビジネスシーンによく合います。
写真における基本原則とも言える「三分割構図」 は、広告や紙媒体のレイアウトの基本原則でもあります。
例えば、横に三分割した時の右側スペースを縦に三分割し、文字のスペースと画像のスペースをこのグリッドに合わせて配置してみたいと思います。
使用する写真は分割構図にしたがって、線やグリッドに合わせてレイアウトし、右側のスペースに会社のロゴマークやちょっとした文章を配置してみましょう。
面白みにかけるかもしれませんが、非常に安定感のある、落ち着いた美しい構図に仕上がっていると思います。
というわけで、写真を撮影する構図のテクニックとしても、画像を切り抜いたりトリミングしたりする時のテクニックとしても、また様々なデザインのレイアウトに生かすテクニックとしても使える「黄金比」や「分割構図」を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
ついでに、黄金比を使用したグリッドやガイドを使用して作られたロゴマークもご紹介しておきます。分割法や黄金比は、応用次第でどんな場面にも活かせるので、ぜひご活用ください。