オリンピック種目になったり日本の女子が超強かったりして、何かと話題のボルダリング。おしゃれな部屋にスタイリッシュな壁とカラフルなホールド、まさにインスタグラムの為にあると言っても過言ではないこの空間で、スポーツしている意識高い系の男と、自称ロハスでヨガとか大好きな女子達。
あえて言おう!!この場所は「岩を登るための練習場であるのだ!本質は岩場を登る事なのだ!!」と。
そんなこと急に言われたって(岩だけに)。僕もつい最近までそんなこと知りませんでしたが、先日ボルダリング仲間に「外岩」ってのに連れて行ってもらいましたので、みなさんにもその魅力と「ボルダリング」っていう言葉の意味などをちょっと詳し目に紹介します。
これからボルダリングを初めてみたい!って人も、最近ボルダリングにハマっててそろそろ外岩デビューかな?みたいな人にも、ちょっと僕の経験した「初めての外岩」の話を紹介したいのです。
僕もボルダリングを始める前までは、「ボルダリングって、あのオシャレでカラフルな石みたいなのがついた壁を登るやーつでしょ?」って思ってました。でも、蓋を開けてみたら違ったのです。
そもそもボルダリングというのは、英語にすると「Bouldering」つまり「Boulder(自然の作用で丸くなった大石、地質学では径 256 mm 以上のもの)」を「ing」する行為なのです。
はい。
思い出してください。あのカラフルな壁のある場所「ボルダリングジム」って呼ばれてません?「ポケモンジム」がポケモンマスターになるための練習場なのと同じで、ボルダリングジムもボルダリングマスターとして岩を登れるようになるための練習場なんですよ。
今となっちゃあ、スケートボードってスケートボードを上達したいがために練習してるって人が多いと思うんですが、元々のルーツを辿るとサーフィンのオフトレだったわけで、サーフィンを上達したい人たちがスケボーとかやってたわけです。
でも今や、スケボーのプロもいますし。スケボーやってる100人に「サーフィンのオフトレですか?」って聞いても、おそらく90人以上「いいえ」って答えると思います。
古くからクライミングをやってる人たちからすると、「ボルダリングってのはなあ!壁を登る行為じゃねえんだよぉ!」となるんでしょうけど、言葉が時代と共に進化するように、「人工的な壁を登るスポーツ」というのが「ボルダリング」と受け取られていき、岩登りとは別のラインで成長を遂げていくのかもしれませんね。
さてさて、ちょっと話がそれてしまいましたが。今日は本当の意味での「ボルダリング」の話。そう、大いなる自然の力によって作られた岩の登るというスポーツに挑戦しようぜ!っていう話です。
今回は、普段僕が行っているクライミングジムのスタッフ「ユタカ君」にアテンドしてもらいながら、関東の岩場の中でももっとも有名かもしれない「御岳エリア」に行ってみました。
あ、一応知らない人のために言っておくと、上の画像の青色の髪の毛の人が僕です。
えーっとですね。集合時間が早すぎます。
うちの会社、出勤時間ですら曖昧ですがだいたい 10時〜12時くらいですよ?朝6時に集合って、朝5時くらいには家でなきゃいけないです。
なんでこんな早いの?と聞いたところ、岩ってのは岩自体が乾燥してないと手が滑って登れないため「気温が低くて乾燥してる時期」がベストシーズンなんだそう。となると今日のような8月〜9月の暑い時期は、早朝や日暮れ以外のタイミングだと暑すぎて登りにくかったりするので、これくらいの時間がいいんだとか。
トポって知ってます?トポ。
ボルダリングのための「るるぶ」とか「じゃらん」みたいなものなんですけど。要するに「御岳エリアにはこの辺りにこんな形の岩があって、このルートで登ったら3級だよ!」みたいなやつなんです。
上のような絵が描かれていて、説明してくれるわけですね。
ボルダリングジムだと、スタートからゴールまでテープが貼ってあるので気にしませんけど、外の岩場だとトポがないと全く楽しくないらしいんです。まあこの後僕は岩場で「トポの洗礼」ってのを受けるんですけどね。
はい、ご想像の通り無人駅です。1時間に1本ってのは言い過ぎですけどね、久しぶりに見ましたよ、こんなにスカスカな時刻表はってくらいの田舎です。
文句ばっかりで申し訳ないですけどね。
僕の場合、家からボルダリングジムまでだと、自転車で5分くらいなんですよ。目が覚めて5分で登攀なんですよ。ところがですよ、岩登りしようとすると片道2時間です。行き道だけでスマホの充電が終了間際まで追い詰められてます。
まあいいでしょう。
正直、今思えばこの日で一番辛かったのがここかもしれません。何が辛いってね、歩くのが辛いんですよ、クライミング用の大きな荷物を持って岩場まで歩くのが!!
ほら!看板のカエルさんもさ、岩がスベるから危ないよ!!って言ってるよ!カエルが滑っちゃうくらいなんだからもう、すごい滑ると思うしやめておかない?
って気分です。
僕のライフスタイルなんてね、目が覚めたら事務所行って、割と高価なデスクチェアに座って踏ん反り返りながら、パソコンで作業しているフリをしてYouTube見たりしてね、それで仕事終わったらチョロチョロっとクライミングジムで登って帰るみたいな感じですよ。
そんな僕がね、朝露で滑る木の階段とかね、ひたすら上り坂のアスファルトとかね、案の定の筋肉痛です。
さあ、ついに最初の岩に到着しました。さっそく登るぞ!と言いたいところなんですけどね、もう歩き疲れてヘトヘトで、しかも岩場のルールもよくわからないって感じなのです。
でもよかった、今日は先輩(6歳も年下だけど)が一緒なんです!着地の衝撃を和らげるクラッシュパッドとかも全部持ってきてもらっているので超安心!僕はクライミングジムに行く感覚の荷物で来てます。正直、歩き疲れたとか言ってごめんなさい。
さて、せっかくだし早速登るぞ!ということで、ユタカ君にトポをもらう僕。
うーんふむふむ、なるほどわからん!!
え?この情報だけでどう登ればいいっていうの?僕に与えられたヒントはたったこれだけ?これ登るのが難しいっていうか、どこを登ればいいのゲームじゃん!!
画像の左がマミ岩と呼ばれる岩で、画像の右がマミ岩のトポです。この「38」「39」「40」ってのがルートの名前で、「この辺からスタートしたら38番のルートだから6級だよ!40番だと3級ね!」みたいなことです。
っていうか38番のスタートホールドってどこ!?
という、トポの洗礼を受けながら、とりあえず6級の課題ということで、スタートホールドを探します。
うーん。ここかな?
しかし合っているかどうかを確かめる術はありません。ジムでのボルダリングを経験したことのある方なら理解できると思いますが「スタートはこの辺、手足自由、登りきって岩の上に立ったらクリア」っていうのが、本物のボルダリングのルールなのです。
え?そんなの簡単じゃん!!って思いました?足のシビアさがマジでヤベーから!!
そして手が痛い!岩がもう超鋭利!!え?なになに?こんなに殺意剥き出しのホールドなんてありましたっけ?もう刃物じゃん刃物!みたいな感じですよホント。ガバなのに!!
手がすっぽ抜けようものなら「ズブシャァ!!」って感じで手がスッパリ逝っちゃいそうです。
まあ、岩ってのはね、登るためにあるわけじゃないしね、クライミングジムってのがいかに「登ってください」なのかを理解しましたよ。
とりあえず初めての「外岩ボルダリング」で「マミ岩の6級」を撃破した僕。よかった6級登れて、という安堵感と、近くを流れる川のせせらぎが合わさって、最高の小旅行気分に浸ってます。そしてオニギリが美味しい!!
岩を登って楽しい、景色が綺麗!これはつまり、キャンプ中のフリスビー的な要素がボルダリングになった的な楽しさ!!そりゃ円盤投げてキャッキャしてるよりは岩を登った方が面白いですよね!って感じ。
木陰で一休みしながら、マミ岩の4級に挑戦するもスタートさせてもらえず撃沈。でも言い訳させてください。「え?本当にコレスタートなの?ジムの2級くらいありませんか?こんなえ?え?」って感じでしたけど。
なんて、ユタカ君と二人でキャッキャしながら、登ったり休んだりをすること30分。
さて、クライミングジムなら「次どのジムいく?」ってことはありません。居酒屋なら「もう一軒逝っちゃう?」みたいなことがよくありますけど。そうなんです、外岩ボルダリングってのは気の合う仲間と居酒屋に行くような、キャバクラを何件もハシゴしちゃうようなものなのです。
そろそろマミ岩も飽きたし、次の岩行っちゃいましょうよ!!
というわけで移動。
正直、外岩初体験中の僕としては、トンネルの中をマット背負って歩く姿は「どんなトラベラーだよ」って気分ですが、コレはコレでかっこいいですね。
途中おばさんに「絵か何か運んでるの?」って聞かれましたけど。
そりゃ、青い髪の毛のモヒカンと、赤と金髪のメガネが二人でデカイ荷物背負って山の中歩いてたら、なんだこいつら絵描か?ってなりますよね。勘違いさせてごめんなさい。
御岳エリアにある「ピンチオーバーハング」っていう岩なんですが、浸水してて登れませんでした。御岳のような河原系ボルダリングエリアに多いそうなのですが、雨やダムの放流による増水で、岩の下地が流されて変化し、水がたまりやすい形状になってしまうこともあるようです。
この岩も特にその影響を受けているようで、3日ほど晴れが続いているのにも関わらず今日は登れませんでした。こういう一期一会的なものも、クライマーが外岩に熱狂してしまう理由かもしれませんね。
正直、マミ岩ですら「指が痛い」と泣き言だった僕にとって、次の岩はもう完全に刃物です。なにこれ。もう痛すぎてテーピングですよ。え?そんなに痛い痛い文句言ってるのになんで帰らないのかって?
そりゃあ。
ジムより外岩の方が面白かもしれないって思いかけてるからですよ!!
イタイイタイイタイ!!って言いながら登ってます。
この後、3つくらい他の岩に行って、3級とかも撃破しました。ユタカ君もずっとトライしてた初段を撃破し、二人でホクホクした顔して御岳エリアをあとにしたわけです。
結局、朝の6時に出発し、8時くらいから登り始めて、16時くらいまで登ってしまいました。うむむ、岩場おそるべし、奴は大変なものを盗んで行きました、あなたの時間です!!って事です。
最後は御岳エリアのロッキーボルダーと呼ばれる岩にいたので、最初に降りた御嶽駅ではなく、近くの沢井駅から電車に乗って帰ることに。
まあ、そんな情報いらないよって思ったかもしれませんが、あまりに駅の看板が読めないくらい薄まっていたので、俺たちは今これくらい田舎で岩を登ってたんだぞ!っていうのが伝わりやすいかと思って載せておきます。
あくまで、家からたった5分でクライミングできるボルダリングジムと、家から重い荷物を背負って片道2時間かけていける外岩、この二つを比較して、となるのでご理解いただきたいのだが。
「うん、外岩はたまにでいいかな!」ってのが純粋な感想です。
まず、めんどくさい、そして指が痛い、さらに虫問題。もちろん小さいマットしかないというリスク。リスクに関してはそれこそが面白いという人もいるのでなんとも言えませんが、純粋に「登る」という行為の楽しさだけで言えば、ジムも岩場もそこまで変わりません。登れた嬉しさも同じくらいですし、登れない悔しさも同じくらいです。
でも2つ明確な違いがあります。
1つは「課題が変わらない」ってこと。まあチッピングと呼ばれる人為的に岩を削る行為をする人や、地震などの天災でグレードが変わってしまうこともありますが、クライミングジムの課題が半年程度でホールド替えにより消滅するのに対して、外岩の課題は数年間はまず変化することはないでしょう。
これにより、自己の成長を体感できたり、課題を登るという目標をジムよりも長期的に考えることが可能となります。さすがに半年で変化してしまうジムの課題に人生はかけられませんが、瑞牆にあるのアサギマダラという課題を登る!というのは人生をかけても良い目標かもしれません。
そしてもう1つ。「開放感」かと思います。今回行った御岳エリア、周りを見渡してみると「登りもしないのにきているグループ」がたくさんいます。そう、登らなくても来る価値のある場所、なのです。そこで登ることも出来る、と考えるとその凄さがわかるかもしれません。
スポーツというよりもレジャーに近いのかもしれませんね。もちろん「岩を登る事」しか見えていない生粋のクライマーは別ですけど。
正直、今回の外岩体験により「岩を登らないキャンプ」みたいなのは考えられなくなっている感じがします。自然に触れ合うのに、岩を登らないなんて!!という感情も芽生えてます。ボルダリングに興味のある人、ジムに行くのもいいですけど、意外と外岩もインスタ映えするかもしれませんよ?