明らかにラスボスを瞬殺できるレベルまで成長した勇者が、世界を魔王の手から救うためにラスボスの待つダンジョンの前のセーブポイントで、あなたがゲームに帰ってくるのを待っていませんか?
別に、ゲームが難しくで諦めた訳でも、ゲームが面白くなくて飽きた訳でもないけど、最近ゲームをクリアしてエンディングを見るって事・・・してないかも?
しかも、ゲームをクリアする直前のラスボス手前までストーリーを進めたのに、結局ラスボスを倒さないままゲーム内の世界をうろうろして、サブミッションや宝箱を回収しているうちに、だんだんそのゲームをやらなくなって放置してしまっている、なんて・・・・・・。
「つまらなくて飽きてしまった」そういう訳じゃないのに、なぜかゲームをクリア直前のラスボス前でやめてしまう。クリアしようと思えばクリアできる難易度なのに・・・。
僕が働いている株式会社PLANの同僚に、名作として語り継がれることが約束された任天堂のゲームソフト「ゼルダの伝説 Breath Of The Wild」の4神獣をクリアしたのに、ラスボス「厄災ガノン」を討伐していないどころか、ハイラル城に乗り込んでもいないままストップしているという人がいます。
僕自身は最近スイッチを買ってゼルダをやり始め、ちょうどこの記事を執筆する前日に厄災ガノンを討伐したところであり、彼に「厄災ガノン、そんな難しくないですよ」と言ったのですが、どうやら難易度が原因ではない様子。
いやむしろ、株式会社PLANきってのゲーマーであり、普段から高難易度ゲームに挑んでいる彼に対し「厄災ガノン、そんな難しくないですよ」というのは釈迦に説法というやつだったかもしれません。
彼なら、厄災ガノンなんて問題なくクリアできる腕前があるはずなんです。
今思い返せば、過去にラスボスをクリアする直前で辞めてしまったゲームがありました。確か時は2004年、PS2の「ドラクエ8 空と海と大地と呪われし姫君」の暗黒魔城都市の直前でセーブしてあるメモリーカードが、きっと実家のPS2に刺さってると思います・・・。
この話を事務所でしたら、社員やインターン生の多くから「ありすぎて困る」という意見が出ました。
そうなんです、この「RPGのラスボス手前」でゲームをやめてしまうという、ある種の精神疾患にも似たような症状は、僕だけじゃなく多くの人に発症しているようなのです!
という訳で、取り急ぎこの「RPGをクリアせずラスボス手前でやめてしまう」という症例に「この旅を終わらせたくない症候群」という名前を付けたいと思います。
なぜ、人は「この旅を終わらせたくない症候群」にかかってしまうのか。
弊社のインターン生達を巻き込みながら意見を交換しあったところ、ある1つの回答が出ました。それは、ラスボスを倒した後のクリア後の世界を冒険することができないという不満が、この病気を発症させているのではないかという仮説です。
別に、ゲームをクリアした後でも遊べるし、なんなら何度でも最初からやればいいじゃん?って思うかもしれませんが、この旅を終わらせたくない症候群はそんな簡単なものではありません。
例えば、日本のRPGの代表とも言えるドラクエを例に挙げましょう。
右も左もわからない状態で始まりの村で目が覚めた僕、勇者であることを唐突に告げられ、不安の中で幼馴染との悲しい別れを経験しながら故郷を旅立ち、スライムと呼ばれる人ならざる魔物との幾多の死闘を乗り越え、多くの人や仲間と触れ合い、時に共に冒険し、時に裏切られ、人としても勇者としても成長した。
いつしか、あの時命乞いをするほど強敵だったスライムは相手ではなくなり、ここまで苦楽を共にした仲間と、世界を滅ぼそうとしている魔王の城の前にたどり着く・・・。
そして、多大な犠牲と膨大な量の薬草を費やした後、ラスボスに最後の一撃を食らわせる・・・。
世界は救われた!やっと、戦いのない平和な世界がやってくる。これで、僕が大好きなビアンカと共に、平和な暮らしができる・・・・・。
と思ってたのに、セーブデータから再開してみたら、まだラスボスの前?え、さっきのは夢なの?まさか・・・この先は・・・平和な世界は・・・ないのか・・・・・。
という絶望!
絶望 絶望 and 絶望ゥ!!
これである。
そう、ゲームを「クリア」や「ラスボス討伐」という終止符をうって決定的に終わらせてしまうと、自分が感情移入した主人公や仲間が、エンディング後の世界という舞台裏に行ってしまい、セーブデータから再開したのは現実ではなくエンディング後の世界に行ってしまったキャラクター達の追憶となってしまうのです。
永遠に・・・一緒に冒険できると・・・あの時は思ってた・・・。楽しい夢が・・・いつか醒めてしまうなら・・・いっそ見たくなかった・・・・。神様・・・こんなのって・・・ひどいよ・・・。
全ての「この旅を終わらせたくない症候群」というのは、様々なRPGをクリアするごとに経験したトラウマの積み重ねにより、ゲームをクリアすることができない、この旅を終わらせることで絶望を味わいたくない!という病気なのです。
RPG初体験の人に発症者がいたという話は聞きません、多くの「この旅を終わらせたくない症候群」発症者は18歳以上の方が多いのも納得です。
とりわけ、サブクエストをしっかりこなしたり、ダンジョン内の宝箱を全部回収してからボスに挑むというタイプの几帳面なプレイヤーが「この旅を終わらせたくない症候群」にかかりやすいようです。
しかし!みんなと「この旅を終わらせたくない症候群」について意見を交わし合ってると、この旅を終わらせたくないという感情以外でゲームクリア不全に陥っているケースもありました。
子供の頃は、買ってもらったゲームをそれこそ達成率100%になるまでやり込みました。
ゲーム内に存在するミニゲーム的要素ですら骨の髄までしゃぶりつくし、最強の武器を手に入れたところで使う相手がいないなんて、まさにゲームクリア不全とは無縁のゲーマーでした。
そんな僕が20歳の頃に発症してしまったゲームクリア不全の一種が「この旅を終わらせたくない症候群」だった訳ですが、弊社にはこの病気以外のゲームクリア不全に陥っているゲーマーがいました。
弊社の隠れゲームクリア不全は以下の3症例。
それらについて、1つずつ解説します。
「この旅を終わらせたくない症候群」が、ゲームの面白さや主人公達のキャラクター性に没入しすぎてしまって発生する症状なら、後天性共感力欠如はその真逆と言える症状です。
ゲーム中にありませんか?今まで主人公やゲームの世界観に感情移入して夢中で歩を進めていたのに、フッと素面になって現実世界に引き戻される時。
スライムに魔法をかけてたのではなく、僕がゲームに魔法をかけられてたのかも!?。
ファイナルファンタジー7の中のスノボゲームで「変」の称号を獲得するまでやり込んだ社長もまた、18歳の頃にやっていたファイナルファンタジー9の中で、「俺は一体誰のレベル上げをしてるんだ?ビビのレベルを上げる前に、俺自身のレベルをあげないと!こいつらが冒険をクリアしたところで、俺の人生という冒険は1歩も前に進んでないぞ!」と、共感性を失ってしまいました。
社長は18歳の頃に発症したこの病気が慢性化してしまっています
ラスボス、ラストダンジョン、ラストクエスト。あと最後のステージをクリアするだけでゲームが全クリできるのに、そこからゲームをしなくなってしまう。
なぜなら、最終ステージの難しさに怖気付いてイモ引いてしまうからです。
基本的にどんなゲームソフトでも、ゲームの終盤というのはゲーム側がかなりの高難度ステージを持ってきます。
例えばポケモンなら、出てくる野生ポケモンが過去に戦ったジムリーダー級のチャンピオンロードを歩かされ、さらにポケモンリーグで四天王&現チャンピオンとの連戦という、まさに気を抜けない激戦が待っています。
ゼルダの伝説BOTWも、ハイラル城を正面突破しようとすれば、正直ラスボスより強いようなライネルが道中で待ち構え、ボスの厄災ガノンにたどり着く頃には武器も防具も全て破壊された丸腰状態に・・・なってしまいます。
そう、あらゆるゲームにおける「最後のステージは超難しいし時間がかかるし疲れる」という共通項のせいで、クリア直前になってサブミッションに浮気してみたり、ゲーム内のミニゲームにはまったりして、そのままフェードアウト・・・という症状です。
症状自体は「この旅を終わらせたくない症候群」と非常に類似しているため、専門でないドクターによっては間違えて診断してしまうことも多いそうです。なので、「この旅を終わらせたくない症候群」だと診断されて、自分自身で違和感を感じた場合はセカンドオピニオンを検討するのも大切なことだと言えます。
次々とリリースされる面白いゲームに目移りしたり、ロングディスタンスで走り続けるRPGにちょっと疲れて、スプラトゥーンやマリオカートにちょっと浮気・・・。
そんなこんなで、結局ゲームをクリアしないまま、気がつけば半年以上経ってしまった・・・なんて経験があれば、あなたは幕の内シンドロームを発症してしまっている可能性大です。
特に、アルバイトをし始めてまとまったお金が手に入るようになった高校生ゲーマーや、ゲームのハードもソフトも苦労せず購入できる収入を得た社会人ゲーマーに発症しやすいこの病気。
オフラインがメインなRPGで発症してしまいやすく、重症な人になるとゲームソフトを買っただけでまだ一度も起動していない・・・なんてケースもあります。
はい、ご家族の方はこちらに・・・。
えー、大変申し上げにくいのですが・・・息子さんの「この旅を終わらせたくない症候群」はステージ4まで進行しておりまして、その、つまり、もう手遅れです。
こちらとしても最善を尽くしましたが、もはや手の施しようがないという状態です。ですので、無理に治療をするのではなく、病気と上手に付き合いながら、様々なゲームを楽しんでいただければと思います・・・。
「この旅を終わらせたくない症候群」は、キャラクターに感情移入しすぎてしまうのが問題です。これと全く同じ症状をアニメの最終回で経験するという人もいました。
多くの人は口を揃えて「これがラストだと知らなければクリアできるのに」と仰ります。
そう、「この旅を終わらせたくない症候群」は、ゲームのパッケージからラスボス感が出てしまったり、あらかじめラスボスの名前が語られるゲームの場合、ほぼ100%発症してしまう難病なのです。
しかし、その他のゲームクリア不全であれば、治す事も不可能ではありません。
これらの多くは、よほど重症な患者さんでない限り治す事ができます。
しかし、間違って欲しくないのですが、このゲームクリア不全は「無理に治さなくても良い」という事です。そうです、ゲームはクリアする事が全てではないのです。
ゲームというのはクリアするものであるという刷り込みにより、昔は当たり前にゲームクリアしていたのに最近の自分は不甲斐ないと落ち込む気持ちが出てしまうかもしれませんが、別にゲームをクリアしていないからといって、あなたが誰かより劣っている事を指し示している訳ではありません。
ゲームというのは、楽しければ何でも良いのです。
買うだけで満足ならそれでもOK!ゲーム代金分の時間が楽しめたならそれでOK!難しくて途中で投げ出したってそれでOK!魔王から世界を取り戻さなくたってOK!なのです。
それでも、ゲームクリア不全を治して、購入したゲームをクリアしてあの頃の達成感を味わいたい!っていう人のために、荒療治かつ対症療法にはなりますが、自宅でできる治療方法をご紹介します。
「欲しがりません勝つまでは」の精神です。
もはやゲームは修行だと思ってください。オナ禁みたいなものです。ついつい他のゲームに浮気してしまったり、ゲームを買っただけで開封せずに積み上げてしまう、そんな人はゲームを買いすぎている可能性があります。
まずは、直近で買ったゲームをクリアしましょう。達成率100%を目指す必要はありません、真エンディングを目指す必要はありません。とりあえず、エンディング画面を見るまで頑張って、そこから新しいゲームを購入しましょう。
もちろん、ゲームの予約も禁止です!
場合によっては、不治の病と言われる「この旅を終わらせたくない症候群」ですら治ってしまうという事もあるため、侮れない治療方法なのがコレです。
出てくる敵を全部倒したくなったり、ダンジョンにある宝箱を全部開けたくなったり、メインストーリーとは関係ないサブミッションを収集したり、そういうのは一旦忘れて一直線にラスボスまで進みましょう。
ゲームを楽しみ尽くしたかったり、武器コンプリートを目指すなら2週目に突入するのが面倒で1週目の段階から頑張っちゃう!みたいな人、特に昔からゲームをしている人に多いと思いますが、メインストーリーに関係のないミッションはこの際無視して、ゲームクリアごの楽しみに取っておいてください。
じゃないと、ラスボスにたどり着くまでにお腹が一杯になってしまいます。
特にRPGを筆頭に重厚なストーリーが練られたゲームで発生しやすいのが「ラスダン前でセーブして休憩したら、やらなくなっちゃった」という現象です。
結構、小説なんかでも多いです、最後の方にしおりを挟んだまま読まなくなったりします。
確かに、ゲームの最後のステージというのは難易度も高く、ストーリーとしても密度の濃い物が配置されているため、一呼吸おいて明日にでも・・・という気持ちになるのはわかりますが、ここで一気にラスボスを倒さないと、ずっとクリアしないまま放置する事になりますよ。
日を跨いでしまうと、ラスボスに繋がるストーリーを思い出せなくなってしまったり、ラスボスを倒せる技術力が低下してしまったり、何だかラスボスを倒したところで・・・みたいな気持ちが出てきます。
なので、「お?次ラスボスか?」っていうシーンに突入したら、ゲーム機の電源を切る事なく、ノリと勢いで全クリまで駆け抜けちゃいましょう!
という訳で、僕からは以上です。